iDeCoで商品を選んで運用を開始したあなた、iDeCoを受け取るにはどのような方法があるのか、どの受け取り方が良いのか悩みますよね。
20~30代の若い方なら「高リスク商品」を選んで運用するのがおススメですが、40~50代にかけてはスイッチングして徐々に「低リスク商品」にスイッチングしながら、受け取り方の「出口戦略」を考えていく必要があります。
出口戦略を考えないと、受け取るときに商品が暴落していたり、多くの税金を払わなくてはいけなくなる場合がありますので注意が必要です。
本記事では、iDeCoの「出口戦略」と受け取り方や税金控除について、最後におすすめの受け取り方を解説します。
iDeCoの商品の選び方については、こちらの記事<個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)商品の選び方|楽天証券iDeCo商品一覧|年齢で運用商品を見直すこと!>をご参照ください。
Contents
- iDeCoの受け取り方は2種類|「老齢給付金」として受け取るため、「一時金」か「年金」のどちらかを選択する。
- iDeCoを「一時金」として受け取る場合|iDeCoを60歳で一括して受け取り、5年後の65歳で会社からの退職金を受け取れば、それぞれ退職所得控除の枠を使った節税ができる!
- iDeCoを「年金」として受け取る場合|iDeCoを60歳~69歳で受け取り、70歳から年金の繰り下げ受給を行うことで節税できる!
- 証券会社によって「年金」と「一時金」を併用可能|iDeCoは柔軟な受け取り方ができる「楽天証券」がおススメ。
- 「障害給付金」「死亡一時金」「脱退一時金」としても受け取れる場合|例外規程あり。
- iDeCoの受け取り方は、結局どれが良いのか|柔軟な受け取り方のできる証券会社を選び、状況を見極めながら対応することが必要。
iDeCoの受け取り方は2種類|「老齢給付金」として受け取るため、「一時金」か「年金」のどちらかを選択する。
iDeCoの受け取り方をおさらいします。
iDeCoは60歳まで引き出すことができません。これはiDeCo=老齢給付金という性質があるためです。
そのため、受け取り方は退職金のように「一時金」として一括で受け取るか、5年~20年かけて「年金」として受け取ることになり、それぞれ「退職所得控除」か「公的年金等控除」が受けられます。
そして、どちらで受け取るかを60~70歳の間に選択する必要があります。
もし、70歳までに選択しなければ、「一時金」として取り扱われることになります。
iDeCoを「一時金」として受け取る場合|iDeCoを60歳で一括して受け取り、5年後の65歳で会社からの退職金を受け取れば、それぞれ退職所得控除の枠を使った節税ができる!
iDeCoを一時金として受け取る場合は、退職所得控除が適応され、以下の方法で課税対象所得及び税額が計算されます。
課税対象所得=(収入金額-退職所得控除額※1)×1/2
※1 退職所得控除額
勤続年数20年以下:40万円×勤続年数
勤続年数20年以上:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
課税対象所得 | 所得税 | 住民税 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 10% | なし |
195万円超~330万円以下 | 10% | 10% | 97,500円 |
330万円超~695万円以下 | 20% | 10% | 427,500円 |
695万円超~900万円以下 | 23% | 10% | 636,000円 |
900万円超~1,800万円以下 | 33% | 10% | 1,536,000円 |
1,800万円超~4,000万円以下 | 40% | 10% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 10% | 4,796,000円 |
例えば、勤続年数40年で退職金1,500万円とiDeCoが仮に1,000万円になった場合、一時金として受け取るのであれば、収入金額2,500万円(1,500万円+1,000万円)、退職所得控除額2,200万円{800万円+70万円×(40年-20年)}となるので、課税対象所得は150万円(2,500万円-2,200万円=300万円×1/2)になります。
これに、上記の表から所得税5%と住民税10%(控除額なし)がかかるため、税額は225,000円(150万円×15%-控除額0円)となります。
収入が2,500万円で税額が22万円ですから、退職所得控除を利用できるのはかなりのメリットがあります。
iDeCoを60歳で受け取り、退職金を65歳で受け取るとさらにお得!iDeCoと退職金の合算額が多い人ほどおすすめの受け取り方!
さらにiDeCoをお得に受け取るには、iDeCoを受け取ってから5年後に退職金を受け取ることをおすすめします。
これは、iDeCo以外の退職金を受け取ってから5年を空ければ、後で受け取った他の退職金についても、まるまる退職所得控除を再度計算することができるルールがあるためです。
先の例で計算すると、60歳でiDeCo1,000万円を受け取った場合、収入金額1,000万円、退職所得控除額2,200万円{800万円+70万円×(40年-20年)}となるので、課税対象所得は0円となり、65歳で退職金1,500万円を受け取った場合も、課税対象所得は0円となるため、税額は0円となります。
ただし、他の退職金を先にもらってiDeCoを後にもらう場合は、15年以降期間を空ける必要がありますので、先にiDeCoを受け取る必要があることに留意する必要があります。
iDeCoを「年金」として受け取る場合|iDeCoを60歳~69歳で受け取り、70歳から年金の繰り下げ受給を行うことで節税できる!
iDeCoの運用をできるだけ長期で行う方法は、70歳~90歳まで20年かけて「年金」として受給する方法です。
60歳から掛け金を追加することはできませんが、そのまま70歳になるまで運用することはできます。
そして、70歳で20年の年金受給を選択することで、年金を少しずつ取り崩しながら90歳まで運用することが可能となります。
長期で運用することでリターンも安定しますし、公的年金の受給年齢引き上げの動きや公的年金では不足する額をiDeCoで補完しながら生活費を受給できるメリットがあります。
現在では90歳以上長生きできる可能性はあるため選択肢の一つにはなりますが、70歳まで生活可能な資金を別に用意する必要があります。
90歳になるまで生存しなかった場合は、残りは遺族に支払われるため無駄にはなりません。
iDeCoを年金として受け取る場合は、公的年金等控除が適応され、以下の方法で課税対象所得及び税額が計算されます。
年金を受け取る人の年齢が65歳未満の場合
公的年金等の収入金額の合計額 | 割合 | 控除額 |
(公的年金等の収入金額の合計額が700,000円までの場合は所得金額はゼロとなります。) | ||
700,001円から1,299,999円まで | 100% | 700,000円 |
1,300,000円から4,099,999円まで | 75% | 375,000円 |
4,100,000円から7,699,999円まで | 85% | 785,000円 |
7,700,000円以上 | 95% | 1,555,000円 |
年金を受け取る人の年齢が65歳以上の場合
公的年金等の収入金額の合計額 | 割合 | 控除額 |
(公的年金等の収入金額の合計額が1,200,000円までの場合は所得金額はゼロとなります。) | ||
1,200,001円から3,299,999円まで | 100% | 1,200,000円 |
3,300,000円から4,099,999円まで | 75% | 375,000円 |
4,100,000円から7,699,999円まで | 85% | 785,000円 |
7,700,000円以上 | 95% | 1,555,000円 |
例えば65歳以上の人で「公的年金等の収入金額の合計額」が180万円の場合には、公的年金等に係る雑所得の金額は次のようになります。
1,800,000円×100%-1,200,000=600,000円
以下は、仮に基礎控除のみと仮定した場合のおよその税金計算をしてみました。
所得税は、600,000円から基礎控除380,000円を控除した金額220,000円に5%を掛けた金額11,000円がかかります。
住民税は、600,000円から基礎控除330,000円を控除した金額270,000円に10%を掛けた金額27,000円に均等割5,000円を加えた32,000円がかかります。
税金の合計金額は次の通りです。
11,000円+32,000円=43,000円
上記の年金に加えて、iDeCo1,000万円を20年間(年間50万円)で受け取った場合、「公的年金等の収入金額の合計額」は230万円となりますので、雑所得の金額は次のようになります。
2,300,000円×100%-1,200,000=1,100,000円
以下は、仮に基礎控除のみと仮定した場合のおよその税金計算をしてみました。
所得税は、1,100,000円から基礎控除380,000円を控除した金額720,000円に5%を掛けた金額36,000円がかかります。
住民税は、1,100,000円から基礎控除330,000円を控除した金額770,000円に10%を掛けた金77,000円に均等割5,000円を加えた82,000円がかかります。
税金の合計金額は次の通りです。
36,000円+82,000円=118,000円
iDeCo1,000万円を20年間の年金で受け取ると、年間75,000円(20年で150万円)も多くの税金がかかる計算となりました。
iDeCoを60歳~70歳まで公的年金等控除の枠内で受給して、公的年金を70歳からの繰り下げ受給する方法もおすすめ!
65歳未満であれば年間70万円まで、65歳以上であれば年間120万円まで公的年金等控除がされるため、所得金額はゼロとなります。
そのため、この枠内でiDeCoを60歳~69歳で受け取り、年金を70歳以上の繰り下げ受給をした場合はどうでしょうか。
iDeCoを60歳~64歳まで70万円×5年間=350万円と65歳~69歳まで120万円×5年間=600万円で受給すれば、所得税は課税されない計算となります。
取崩しながらではありますが、運用を10年間継続させることも可能です。
さらに、公的年金を70歳から繰り下げ受給することにより、42%増額されることになります。
これはかなりのメリットです。
180万円の42%増額された場合は255万円となり、70歳から一生涯受け取れます。
仮にiDeCoを年金で受給しない場合でも、70歳までの資金を自力で賄い、公的年金の繰り下げ受給をしたほうが老後を安心して過ごせるのでおすすめです。
証券会社によって「年金」と「一時金」を併用可能|iDeCoは柔軟な受け取り方ができる「楽天証券」がおススメ。
楽天証券の受け取り方は、実に柔軟です。
受け取り期間は5年以上20年以下の期間から、1年刻みで選択することができます。
受給回数も6種類(年1回、年2回、年3回、年4回、年6回、年12回)から選択できます。
年金と一時金を併用して受け取りも可能です。
例えばですが、60歳で半分を受け取り、残りの半分を20回(年2回ずつ10年間)で受け取ることも可能です。
ここまで細かく受け取り方を分けていない証券会社も多いです。
所得控除や生活状況の変化で、出口戦略を見直すことが必要となることを考慮した場合、受け取り方が柔軟な「楽天証券」での運用をおすすめします。
「障害給付金」「死亡一時金」「脱退一時金」としても受け取れる場合|例外規程あり。
加入者が高度障害となった場合は、障害給付金として受け取りが可能となる場合があります。
加入者が亡くなった場合には、遺族が死亡一時金として受け取ることになります。
また、基本的には中途解約できないiDeCoですが、国民年金保険料の納付を免除された場合などの他、一定の要件を満たした場合は、脱退一時金として受け取りが可能となる場合がありますので、特に家族の方は知っておくと良いでしょう。
iDeCoの受け取り方は、結局どれが良いのか|柔軟な受け取り方のできる証券会社を選び、状況を見極めながら対応することが必要。
60歳を迎えた時の経済状況や生活環境の違いがあるため、正解はありません。
あえて言えば、60歳になるまでに「低リスク商品」へスイッチングしながら、状況を判断していくことが正解かと思います。
現時点での私の結論では、60歳になるまでに十分なリターンを確保し、元本保証商品に切り替えが済んでいれば、iDeCoを60歳で一時金として受け取り、退職金を65歳で受け取り、公的年金を70歳から受け取ることが理想的だと考えています。
しかし、株価の暴落などにより思うようにスイッチングできずに60歳を迎えた場合は、なるべく運用を継続したいので、iDeCoを60歳~69歳まで年金として取崩しながら運用していく方法をとるのではないかと思います。
その時々の状況で受け取り方の考えも変わるので、柔軟な受け取り方ができる楽天証券などの証券会社で運用しておくことをおすすめします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ご参考になれば幸いです。